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「夏やし、ここ前貝塚」
○サクマ家・リビング ソファーにだらしなく座っているサクマ。だるそうに立ち上がり冷蔵庫から麦茶を入れてくる。だるそうに飲む。 ○同・階段 頬杖をつき座っている。そして這うように階段を上がっていく。 ○同・部屋 あぐらをかき大好きな漫画を読んでいる。 サクマ「私は、見ての通りの実家暮らしで、いつもは地元の喫茶店で6時間から8時間働いている。家族は父、母、兄、そして私。両親は共働きでこの時間はいない。兄は平凡なサラリーマンで今は大阪。そして私は今日バイト休み。」 読んでた漫画を投げる。立ち上がり少し部屋をうろつき部屋を出る。 ○同・玄関 座り、鼻歌。出かける。 ○道 だるそうに歩く。サンダルを擦るように歩く。歩きたくなさそうに歩く。 ○コンビニ 店の外壁にもたれアイスを食べている。そのサクマの目の前を自転車に乗ったウヅマキが通りすぎ、戻ってくる。 ウヅマキ「おい、サクマ」 サクマ「ん?・・・あ!」 ウヅマキ「よう、久しぶり。おまえこんなとこで何してんの?」 サクマ「え・・・今から銀行」 ウヅマキ「銀行もう終わってるぞ」 サクマ「銀行強盗だから終わってから行くんだよ」 ウヅマキ「でも久しぶりだな。元気?」 サクマ「元気元気、見てよこの力こぶ」 ウヅマキ「おまえじゃないよ、おじさんおばさん」 サクマ「う・・・元気だよ。相変わらず共働きよ」 ウヅマキ「何だよ、冗談だよ。ふくれんなよ、おもしれーから」 サクマ「あんたこそ何してんのよ。どっか行くんじゃないの?」 ウヅマキ「俺、東京行くんだよ」 サクマ「ふーん、行ってくれば」 ウヅマキ「お前、淀川十三知ってるか?」 サクマ「当たり前じゃない」 ウヅマキ「俺、アシスタントに採用されたんだ。住み込みで働くんだよ。どーだ、すごいだろ」 サクマ「つーか、あんた、漫画家志望だったの?」 ウヅマキ「知ってるだろ、昔から絵が得意だったの」 サクマ「知らないわよ、昔の女じゃあるまいし」 ウヅマキ「じゃあな。ビッグになるまでは帰ってこないから」 サクマ「ちょっと待って」 ウヅマキ「引き止めてくれるな」 サクマ「あんた自転車で駅まで行くの?しばらく帰ってこないのに自転車どうすんの?」 ウヅマキ「そうだな。あ、おまえ駅まで送ってくれよ。で、俺ん家に自転車戻しといてくれよ」 サクマ「やだ。駅遠い」 ウヅマキ「自転車だからすぐだよ」 サクマ「帰りが上り坂だからやだ。バスで行きなよ」 コンビニそばのバス停で時間を確認するウヅマキ。 ウヅマキ「30分くらいある」 サクマ「付き合ってあげる。だから、ほら、ジュースとか、甘い何かとか」 ウヅマキ「逆だろ。餞別って知らないのかよ」 サクマ「バーカ。ゼロからのスタートを切るためにここであぶく銭を使っちまうんだ」 ウヅマキ「まあいいけど。お前金持ってなさそうだし」 コンビニに入るウヅマキ。 サクマ「何よ、人をフリーターみたいに。・・・あ、私、フリーターだ」 ウヅマキ「はい」 買ってきたジュースを渡す。 サクマ「ありがと」 サクマの隣に座り缶コーヒーを飲むウヅマキ。 サクマ「ねえねえ」 ウヅマキ「ん?」 サクマの方を見る。 ウヅマキ「えっと、何してんのかな?」 すごい体勢でジュースを飲むサクマ。 ウヅマキ「・・・最近どうしてんの?」 サクマ「最近?最近は・・・」 同じ体勢で答えようとしている。 ウヅマキ「あーわかったわかった。すごいよ、ほんと。すごいすごい」 サクマ「(体勢を戻し)でしょ?あんたが旅立つ前に見せることができてよかった」 ウヅマキ「ありがと」 サクマ「今は喫茶店で働いてる。エリザベス」 ウヅマキ「え!あそこまだつぶれてないの?」 サクマ「マスターぴんぴんしてる。中学の時から知ってるけど、全然変わってない。あの人きっと妖怪だよ」 ウヅマキ「そっか。でも働いてるって聞いてちょっと安心した」 サクマ「あんた、送別会とかやってもらってないの?みんな薄情だねえ。言ってくれれば私・・・」 ウヅマキ「送別会はやってもらった」 サクマ「私呼ばれてないけど」 ウヅマキ「・・・」 サクマ「私のことなんて忘れてた?」 ウヅマキ「違う。そうじゃない・・・」 サクマ「じゃあ何よ」 ウヅマキ「あいつらが来るってわかってたから」 サクマ「あいつらって?」 ウヅマキ「・・・中学の時、おまえをいじめてた奴ら」 サクマ「・・・」 ウヅマキ「来るってわかってて、おまえのこと呼べないだろ」 サクマ「あんた何か勘違いしてる」 ウヅマキ「え?」 サクマ「私は、いじめられたりしてない」 ウヅマキ「うそだ。あれはれっきとしたいじめだろ?」 サクマ「違う。私はいじめられてると思ったことは一度もなかったし、あいつらだっていじめてるなんて思って・・・」 ウヅマキ「じゃあなんで、じゃあなんであん時泣いてたんだよ」 サクマ「え?」 ウヅマキ「俺見たことあるんだよ。学校の帰り道、おまえが泣きながら歩いてんの」 サクマ「・・・」 ウヅマキ「あんなつらそうな姿見て、いじめられてなかったなんてとてもじゃないけど思え・・・」 サクマ「じゃあどうして助けてくれない。知っててどうして・・・」 ウヅマキ「・・・ごめん。でもあん時は何もできなかった。それがわかってたから俺はおまえともあいつらとも距離をとった」 サクマ「そんなの・・・そんなの卑怯だよ」 ウヅマキ「何もできないなら、それが一番いいと思った」 サクマ「あんた、いつからか裏山の基地にも来なくなったよね。漫画持ち合ってよく読んでたじゃん」 ウヅマキ「それは、部活が忙しくなったり、彼女ができたり」 サクマ「あんた、基地をいかがわしいことに使ってないでしょうね?」 ウヅマキ「・・・してないよ」 サクマ「もう、今の返事、おもいっきり怪しいじゃない」 ウヅマキ「ちょっとキスしたくらいで」 サクマ「やってんじゃん。私がひとりで漫画読んで帰った後コソコソやって来てチュッチュチュッチュしてたんだ」 ウヅマキ「・・・なあ、あの頃寂しかったか?」 サクマ「どうだろ。もう忘れちゃった」 ウヅマキ「でもおまえ、学校は皆勤賞なんだよな」 サクマ「好きだったよ、学校。だから休まなかった」 ウヅマキ「そっか」 サクマ「そろそろバス来るんじゃない?」 立ち上がりバス停に向かうサクマ。そのうしろ姿を見つめるウヅマキ。 ○バス停 イスに座る二人。 サクマ「じゃあここでモノマネを」 ウヅマキ「なんで?」 サクマ「ヴフフ~、シノハラですぅ~」 ウヅマキ「古っ」 しばし沈黙。 サクマ「がんばりなよ」 ウヅマキ「うん」 サクマ「この際」 ウヅマキ「ハハ、この際ね」 サクマ「私はあんたに対して何もできないからがんばれみたいなことしか言えないけど、あんたはあんたのことなんだから何でもできる」 ウヅマキ「うん。・・・でも俺もこの町を離れる時が来たか」 サクマ「この町のことは私にまかせて。立派に守ってみせるから」 ウヅマキ「何も起こんないだろ、こんな小さな町で」 サクマ「違うよ。日々いろんなことが起こってるんだよ。みんな見ないだけだよ」 ウヅマキ「東京遊びに来いよ。案内してやるぜ」 サクマ「やるぜって・・・『東京、俺のモノ』みたいに」 遠くにバスの姿が見える。ウヅマキ、立ち上がる。 サクマ「ねえ」 ウヅマキ「ん?」 サクマ「キスしてあげるよ」 ウヅマキ「は?」 サクマ、ウヅマキの顔を両手で鷲掴みにし、キスする。 ウヅマキ「んーんー、ばっ、おまえ、息できない・・・」 サクマ「ハーハー、それが、ハー、今からの、つらい、ハー、じんせ・・・」 ウヅマキ「何やってんだよ。あと、正面同士じゃしづらいだろ」 サクマ「正面からぶつかっていくんだ」 ウヅマキ「え?」 サクマ「うまいやり方なんて考えないで、とにかく・・・」 ウヅマキ「メッセージか」 サクマ「そう、メッセージ」 ウヅマキ「わかりにくいなあ」 サクマ「そんなもんだ」 バスに乗り込んだウヅマキ、サクマに手を振る。 サクマ「アホみたいな顔してるな、ハハッ」 サクマも大きく手を振る。バス出発。 ○バス停 イスに座っているサクマ。バスが止まり、出発する。イスに座っているサクマ。 サクマ「さあ行くか」 立ち上がりウヅマキの自転車のスタンドを外し歩き出す。 ○道 だるそうに歩いているサクマ。 ツル「先輩」 サクマ「ん?」 顔を上げると自転車に乗った後輩のツル。 サクマ「あ、ツル。銀行?」 ツル「もう終わってますよ。今日ライブなんです、下北で」 サクマ「(少し険しい顔で)東京か」 ツル「先輩こそ何してるんですか?」 サクマ「見回り。この町を守ることが私の使命だから」 ツル「もう、何言ってるんですか。先輩も一度ライブ来て下さいよ」 サクマ「東京は遠い」 ツル「そんなことないですよ。1時間かかんないし」 サクマ「いや、距離の問題じゃないのだよ」 ツル「じゃあ何ですか?」 サクマ「私と東京の問題なの」 ツル「・・・私時間なんで行きます」 自転車を漕ぎ出す。 サクマ「ねえ」 自転車止まる。 ツル「(振返り)はい?」 サクマ「今度ここでやってよ、ライブ。そしたら私、一番前で見るから」 ツル「はい。それじゃ」 自転車で走り出すツル。 サクマ「後輩の背中に手を振ってエールを送る。そして私は自転車を届ける」 サクマ歩き出す。
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コッチコイヨ
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